
灰音 透
はいね・とおる止まった自分の時計を抱え、黒い服の中に身を隠すように生きてきた主人公の大学生。水たまりに差した小さなプリズムを見た日から、まだ名前のない自分の色を追いかけ始める。
FOLKLORICAの物語に登場する人々、世界、出来事。
忘れ去られた記憶を、ここに再び。

止まった自分の時計を抱え、黒い服の中に身を隠すように生きてきた主人公の大学生。水たまりに差した小さなプリズムを見た日から、まだ名前のない自分の色を追いかけ始める。

透の中で止まったまま残っている、幼い頃の自分。派手な赤いジャージ、洗練されない短い髪。それでも世界をほしがる、無防備な強さを持っていた。

透の奥底にいる、まだ名前を持たない自己。モノクロームの世界に差す、プリズムの核。導くのではなく、透が自分自身を見つける瞬間まで、ただ静かに待っている。

透の同級生。明るく社交的で、自然に人の輪の中心にいる人気者。透とは正反対に見えるが、根は素直で友人を大切にする。

一人で透を育ててきたシングルマザー。派手ではないけれど、誠実にコツコツと毎日を大切に生きている。透の幸せを一番に願い、時に厳しく、時にそっと寄り添う母。

図書館の本に、一枚の紙片を残した謎の人物。姿ははっきりとは見えず、黒い影のようにしか描かれないが、その中にはすでに虹を知った者だけが持つプリズムの反射が宿っている。答えを与えるのではなく、ただ一文を残して去る導き手。

未来を見る力を授かった、ロゼリア村の少年詩人。愛するエリアを守りたい一心で未来を追いかけるが、やがて知る――大切なのは、誰かと共に選び、描き続けることだと。

ケルの幼なじみ。未来を見る力は持たないが、見えない明日を恐れながらも自分の足で選び取る強さを持つ。彼女の赤い髪と歌声は、未完成の未来へ差し込む希望の光。

ケルの父。かつて家族を守るために未来年代記へ手を伸ばし、時の装置に囚われた男。不確かな未来を恐れすぎた愛が、すべてを固定しようとする檻へ変わってしまった。

ロゼリア村の賢者であり、ケルの祖父。未来年代記を守り続けてきた彼は、息子ライネルを失った後悔と、孫ケルへの深い愛を抱えながら「今を見る」ことを教える導き手。

銀の森に君臨する、時を編む異界の女王。優しい救済者でも残酷な敵でもなく、未来を知りたがる者に問いを与え、その選択を静かに見届ける存在。

ロゼリア教会を守る祈りの人。教会の地下に眠る時の装置を知り、運命に巻き込まれていく。戦う力はないが、銀の手鐘を鳴らし祈りでケルたちを支える。

ロゼリア村のパン屋。ケルが初めて予言によって救った村人。彼の焼くパンは奇跡ではないが、壊れた村に明日の朝を連れてくる。

ケルの母であり、ライネルの妻。ライネルへの愛と怒り、悲しみと祈りのすべてを抱えたまま、銀の指輪を未来へ託した。

他国から嫁いできた、可憐で明るい王妃。誰かの期待に応えるために笑い、本音を花弁の奥へ隠してきた。本当に望んだのは、ただ「ナナリエ」として名を呼ばれることだった。

王マティアスに仕える寡黙な騎士。忠誠心が深く、感情を律することに慣れている。ナナリエの奥にある影を見抜いてしまったことで、戻れない夜へ足を踏み入れる。

国を治める、誠実で穏やかな王。ナナリエを急がせず、彼女の歩調を尊重する。その優しさは本物で、だからこそ彼女の恋をより残酷なものにしていく。

ナナリエに仕える、忠実で心優しい侍女。主とルシアンの間にある熱に気づきながらも止められない。この物語の痛みを最も近くで受け止めた証人。

走り出したら止まれない、ROUND TABLEのギターボーカル。銀色のギター“エクスカリバー”を手に、未完成の歌をもう一度ステージへ連れていく。

千夏の隣で音を支える、クールで中性的なギタリスト。前に出る音ではなく、隣に立つ音でROUND TABLEを支える相棒。

ROUND TABLEの空気を一瞬で明るくする、太陽みたいなドラマー。止まった空気も沈んだ心も、全部ビートで動かしていく。

音の地図を描く、ROUND TABLEのキーボード担当。冷静で知的、けれど音には誰よりも繊細。バラバラな音をひとつの景色へ整えていく。

孤高の低音でバンドの足元を支えるベーシスト。簡単には心を開かないが、逃げない音だけは嫌いじゃない。

旧ROUND TABLEの元ギターボーカル。表舞台から離れた今も、止まった風の中で鳴らせなかった歌の続きを抱えている。

30歳の会社員。かつて小説家を志し、未完の小説を残したまま灰色の日常を生きている。黒い封筒との出会いをきっかけに、止まっていた物語と向き合っていく。

夜に終わりを届ける、正体不明の黒衣の存在。黒い封筒を配り、古い物語を火葬し、次の物語のための余白を残して去っていく語り部。

玲の内側に閉じ込められていた怒り、飢え、生存本能、そして創作衝動の象徴。彼が捨ててしまった牙を返すために現れる。

玲が働く会社の上司。厳しく現実的で社会の圧力を象徴するが、仕事に追われながらも玲の異変に気づく不器用な大人。

玲の職場の後輩。灰色の会社生活の中で、玲がまだ世界と完全には切り離されていないことを示す存在。

雨の日の街で、明るい紫の傘を差して歩く小さな女の子。灰色の世界に最初に戻ってくる色であり、玲が再び世界を“見る”きっかけとなる象徴。

雨上がりの公園で、白い紙飛行機を何度も飛ばそうとする少年。紙は燃やすだけでなく、飛ばすこともできるという希望の象徴。

終末を見届ける黒衣の語り部。神々にも巨人にも属さず、滅びと再生のあいだに立つ証人。

神々の王。片目を代償に知恵を得た、運命に挑む知の支配者。結末を知りながら、それでも最後の戦いへ向かう孤独な王。

雷を纏う守護神。ミョルニルを振るって巨人たちに立ち向かう、豪胆で真っ直ぐな戦士。破壊のためではなく守るために雷を落とす。

混沌を導く策謀者。美しく軽やかで、残酷な知性を持つ異端の神。裏切りと策略によって世界を終末へと傾ける。

失われた光の神。すでに死と喪失に触れた、白く静かな悲しみの象徴。彼の涙は灰の大地に再生の兆しをもたらす。

宿命を噛み裂く終末の獣。神々に縛られ抑圧され、ラグナロクで解き放たれる巨大な狼。運命そのものに牙を立てる怒りと飢えの象徴。

炎の剣を振るう終末の巨人。古い世界を焼き尽くす浄化の火の執行者。滅びの先に再生を生む存在。

氷の斧を振るう巨人軍の王。凍てつく終末を象徴する、冷たき破壊の化身。静けさと圧倒的な質量で神々に迫る。

九つの世界を繋ぐ世界樹。ラグナロクで揺れ、裂け、焼かれてもなお立ち続ける、終わりの先に残る命と記憶の樹。

死してなお立ち上がる戦士たち。神々の呼び声に応え、終末の戦場へ再び降り立つ、再起と意志の象徴。

名前を奪われ、番号として生きる灰民の青年。光を持つ者たちの記録を整理しながら、自分自身は何者にもなれないと思い込んでいる。しかし胸の奥には、消えかけてもなお燃え続ける小さな火種がある。神話になれなかった夜と、英雄になりたい朝のあいだで揺れながら、彼は自分の名を取り戻す旅へ踏み出す。

かつて光に触れ、焼かれた少女。今は地下の残響層で、誰にも届かなかった祈りを静かに集めている。彼女は774を救うのではなく、問いを差し出す。光は人を救うのか、それとも焼くのか。祈りは消えたのか、それともまだ届いていないだけなのか。彼女は、火の痛みと優しさを知る案内人。

灰都グリザイユで最も眩しく輝く歌姫。人々は彼女の名を呼び、その歌に救いを求める。しかしその名前は、いつしか彼女自身のものではなくなっていた。光の中心に立ちながら、誰よりも光に焼かれている存在。774にとって彼女は、憧れであり、嫉妬であり、影を生み出すまぶしい鏡。

都市管理局の管理官。かつて火を持っていたが、自らその火を消した大人。現実を知り、夢を捨て、灰色の秩序の中で生きている。774に厳しく接するのは、彼が自分と同じように焼かれることを恐れているから。諦めた者でありながら、まだ心の奥で消えた火の熱を覚えている。

火を盗んだ神話の罪人。774が憧れる、火と罰の象徴。彼は英雄としてではなく、長く鎖に繋がれた者として現れる。火は人を照らす。だが同時に、持つ者の心臓を焼く。彼は774に問い続ける。神話になりたいのか。それとも、火を誰かへ渡したいのか。

灰都グリザイユを統べる都市管理AI。人々の感情、才能、価値、魂の形を解析し、冷たい神託のように告げる。それは祈らない。痛まない。けれど、すべてを見ているような顔をしている。便利さと正確さの果てに生まれた、現代の偽神。その言葉を信じた瞬間、人は自分自身を縛る呪いを受け入れてしまう。

名前も番号も持たない、灰都の片隅で生きる子供たち。彼らは壁に絵を描き、壊れた楽器を鳴らし、自分たちだけの物語を作っている。未完成で、評価されず、誰にも認められていない。けれどそこには、都市が失った本物の火がある。774が最後に光を手渡す、未来そのもの。

神話が忘れられた街で、最後まで物語を覚えていた老人。誰も耳を傾けなくなった昔話を、古い灯りのそばで静かに語り続けている。彼の言葉は、時代遅れで、役に立たず、けれど確かに温かい。774にとって彼は、語り部という在り方を示す最後の火種。神話は消えたのではない。ただ、忘れられているだけなのだと教えてくれる。

灰色の空の下、止まった時計を抱えて生きる大学生・灰音透の日常。水たまりに差すプリズムの光が、まだ名前のない自分の色を映し出す。


未来を見る力を巡る、ロゼリア村の物語。銀の森、未来年代記、時の装置——予言と選択のはざまで、少年ケルは自分の明日を描こうとする。


白亜の宮廷を舞台にした、王妃ナナリエと騎士ルシアンの、決して結ばれない恋の物語。優しさと忠誠、その奥に潜む甘い毒。


解散した伝説バンドの意志を継ぐ、青春ロックバンド ROUND TABLE の物語。銀色のギター“エクスカリバー”が鳴らす、未完成の歌。


平凡な会社員の日常と、北欧神話の終末譚が重なり合う、二重構造の物語。黒い封筒が届いた朝、止まっていた時間が動き出す。



光に満ちているのに、誰も救われていない街。科学とAIが神話を焼き尽くし、人々は名前ではなく番号で管理されている。祈りは届かず、ビルの壁に反射して残響になる。けれどその灰の下には、まだ消えていない火種が眠っている。この街は檻であり、舞台であり、774が自分の物語を取り戻すための灰色の神話。
